エジプト美術にも影響を与えた古代の竜
古代のメソポタミアの文献や伝承に登場するのがムシュフシュです。
未確認生物と言うよりは幻想生物ですが、後世にも様々な影響を与えた怪物ですね。
一説には霊獣とされる事も多く、レリーフに描かれる等割とメジャーな怪物だった可能性もあります。
どことなく中国の麒麟と似た様なイメージがありますが、歴史的には恐らくムシュフシュの方が古いんではないでしょうか。
「ムシュフシュ」と言う名前の由来は、当時の言葉で「恐ろしい竜」と言う意味があるようですが以前はシルシュとも呼ばれていたそうです。
専門家の解析が進むにつれて、現在ではムシュフシュの方がより正しい発音となっています。
ムシュフシュの外見について
ゲームなどのエンターテイメントにも顔を出す事の多いムシュフシュですが、概ね蛇のモチーフが用いられている事が多いです。
「毒」にまつわるエピソードが多いですが、これは元々の伝承で頭部が毒蛇となっていたからではないでしょうか。
上半身はライオン、下半身は鷲、尻尾はサソリと言うのが最初のディティールの様です。
色々な動物が混ざっている姿は、キメラやマンティコア、パピルサグと言った他の怪物とも共通していますが、恐らく全てムシュフシュから派生したものではないかと思います。
最初は怪物と言うよりも、ニンアズと言う名前の神様に付き従う聖なる動物と言う認識だったようですね。
冒頭でも書いた霊獣と言う位置づけはここの事を指しているんだと思いますが、この時は姿形ももっと身近な生物の様になっています。
四足歩行の馬の様な生物ですが、首が少し長くキリンをギュッと縮めた様な感じです。
ナルメルと言う王様がエジプトを征服した記念に作られたパレットにもその姿が彫り込まれています。
その後、エジプトの文化にも溶け込み、美術の世界でもモチーフとして使われる様になるなど影響を多く与えました。
有名になっていくムシュフシュとその神話
その後も時代が移り、統治する王様が変わるたびに新しい神様の随獣として有名になっていきます。
民の認知度も上がって、最終的には最高神の随獣と言う位置まで上り詰めますね。
ムシュフシュにまつわる神話は、バビロニアの叙事詩「エヌマ・エリシュ」の中に記述されています。
バビロニア神話では原初の竜ティアマトと言う大きな神様が登場しますが、この竜がきたるべく英雄との戦いのために複数の怪物を生む描写が出てきます。
ムシュフシュはその内の一匹として登場し、後に英雄マルドゥクと戦いますが、最終的にティアマトが破れた後はマルドゥク側の軍門に下り騎乗用の霊獣として活躍する事になります。
その他当時のユダヤ教やキリスト教の中にもムシュフシュを思われる蛇、もしくは竜にまつわるエピソードが沢山出てきて、当時バビロニアが隆盛を誇っていた事も同時に伺えますね。
[当記事の著作権はhttps://chahoo.jp/に帰属します]2016/07/04当記事の無断転載は禁止しています。