ギリシャ神話に登場する牡牛と人間の混合生物
久しぶりの幻想生物関連の記事になります。
今日は、ギリシャ神話を代表する合成怪物ミノタウロスに関して色々書いてみようと思います。
基本的にギリシャ神話の怪物は、そのインパクトのある外見や細部まで作りこまれた逸話が伴って有名な物が多いんですね。
ミノタウロスと言う幻想生物については知っている人も多いと思いますが、一体どのような背景があってこの様な怪物が生まれたか等は知らない人も多いんではないでしょうか。
おおよそゲームの中に登場し、幼少期にそれで知ったと言う人も多いと思いますが、ミノタウロスの背景には当時の牡牛信仰やギリシャ神話の逸話が絡んで奥の深い物となっています。
ミノタウロスの誕生について
まず、ミノタウロス(時にミーノータウロスとも呼ばれる)の出自に関してはクレタ島で生まれたとされています。
当時ここを治めた王様の名前はミノス王と言い、「ミノス王の雄牛」と言う意味合いからミノタウロスと呼ばれました。
具体的にミノス王と雄牛の関係が気になるところですが、ギリシャ神話によると海の神様であるポセイドンが所有していた一際美しい白い雄牛がいたとの事です。
その美しさに惚れ込んでしまったミノス王は、必ず後で生贄として捧げると言う条件の元、この白い雄牛を譲り受けます。
しかし、人間とは真に良いものは手放したくないもの。ミノス王はこの白い雄牛を手放す気はさらさら無く、代わりに普通の雄牛を生贄として捧げてしまいます。
悪事はバレる物で、この一連のミノス王の神を欺く行為はすぐにポセイドンの知るところとなります。
怒ったポセイドンは、ミノス王の妃であるパシパエに呪いをかけてしまうんですね。
その呪いとは、白い雄牛に欲情して止まらないと言う物でした。
どう白い雄牛と交わろうとかと考えたパシパエは、名工ダイダロスに命じて雌牛の模型を作らせます。
自分はその中に入って、見事白い雄牛と交わる事に成功するんですね。
なんともパワープレイ感溢れる逸話ですが、細かい部分はざっくりしているのがギリシャ神話の魅力だったりします。
ちなみにこのダイダロスと言う人物にまつわるエピソードも沢山あって、この人の話だけ読んでいても面白いです。
話はミノタウロスに戻りますが、この白い雄牛とパシパエの交わった結果誕生したのがミノタウロスでした。
ご存知の通り筋骨隆々な体に頭部は雄牛と言う外見です。
元々アステリオスと言う「雷光・星々」を意味するカッコイイ名前が付けられたようですが、人々は嘲笑の意味も込めてミノス王の雄牛=ミノタウロスと呼んだようですね。
迷宮に閉じ込められたミノタウロス
ミノタウロスを語る上で避けて通れないのが、迷宮=ラビリントスの存在です。正式名称クノッソス宮殿と呼ばれる物です。
英語でも迷宮の事をラビリンスと呼ぶのはここが語源になっていますが、どう言った経緯でミノタウロスは迷宮に閉じ込められたんでしょうか。
実は、成長するに従い粗暴な面が目立つようになって来たミノタウロス、困ったミノス王はダイダロスに命じてラビリントスを作らせます。
そして、完成したその迷宮の中にミノタウロスを閉じ込めてしまうんですね。
要は他の人間に乱暴を働かない様にとの対策ですが、結果元祖引きこもりの誕生です。
屋外に出ることはなくなり、その代わり定期的に人間の生贄を捧げる事になったんです。
この生贄は、遠く離れたアテナイの街から9年ごとに7人の男女が贈られたと言われています。
何とも半端な年月ですが、イメージとしては日本の各地で見られる7年ごとに行われるお祭りの様な物だったんでしょうか。
とにかくこの生贄騒動に関しては近隣の人々を長年悩ませる事になります。
英雄テーセウスの登場とミノタウロス退治
ミノタウロスの最期を知っている人もあまり多くないと思います。怪物であるがゆでに、ハッピーエンドではないだろうと勘ぐる人が多いんではないでしょうか。
この半身半獣の怪物を退治したのは、テーセウスと言う若者になります。
テーセウスはアテナイの王子でありながら、生贄が始まってから3度目の時に自ら生贄に志願しました。
最初にミノタウロスが閉じ込められてから実に27年もの月日が流れた計算になります。
短剣を片手にラビリントスに乗り込んだテーセウスは、入り組んだ迷宮の内部でミノタウロスと遭遇すると、これを格闘の末殺す事に成功します。
一説にはミノタウロスの弱点である眉間を殴ったともされていますね。
最初から勝算があっての志願だったんでしょうか。
気になる迷宮からの脱出に関してですが、迷宮に入る前にミノス王の娘、アリアドネから毛糸の玉をもらっています。
要は、迷宮に入った時から毛玉をほどきつつ進むことで、帰りはその糸を逆に辿っていくことで簡単に脱出したと言います。
怪物退治の前にちゃっかりラブロマンスがあるのもギリシャ神話ならではかもしれませんね。
テーセウスの後日談もドラマがあって、アリアドネを妻にもらうと最初から約束していたにも関わらず、帰路ナクソス島で別れてしまいます。
飽きて置いてきたと言う説が濃厚ですから、なかなかに酷い話ですね。
古代の雄牛信仰がモデルか
ここまでざっくりとミノタウロスに関する逸話を紹介してきましたが、当時このクレタ島付近では雄牛信仰が盛んだった事が分かっています。
豊穣の対象として、雄牛が一つの神性視された生物だったんですね。
実際その当時のお祭りで、司祭が雄牛のお面を被り、複数の牛にあたりを走らせて皆で盛り上がると言う物があったようです。
その他の地域でも、牛自体今よりも特別な生き物として、様々な話に登場します。
12星座の中に牡牛座があるのも一つの名残だと思いますが、この様に当時広く認知された生物だからこそ深く歴史と結びついたと言えるでしょう。
ミノタウロスの神話は、それを見事に体現した物だと言えるでしょう。
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