旧約聖書に登場する海の怪物リヴァイアサン
旧約聖書のヨブ記、イザヤ書等に登場する海の怪物がリヴァイアサンです。
体は非常に大きく、地域によっては悪魔とも分類される、宗教学的にも重要な幻想生物です。
ヘブライ語ではレヴィアタンと呼ばれていた者が、英語圏に広まった後に「リヴァイアサン」と発音されるようになりました。
その意味は元々「ねじれた者」と言うニュアンスから来ており、この事からも聖書に登場する時点でクジラや巨大な海蛇などをモチーフにしたんではないかと言われています。
海洋、強大と言うイメージが付きまといますから、現代になっても海にまつわる船舶や兵器の名前などに付けられる事が多いです。
他にもゲームを始めとして映画や書籍にも多く登場しますね。
日本でも割と知られた怪物だと言えるでしょう。
仲間はベヒーモスとジズ
不思議な事にこの巨大な海の怪物を作ったのは神様と言う事になっています。
天地創造5日目に、陸のベヒーモス、空のジズと共に海を総べる怪物として作られました。
ベヒーモスを神自ら「最高傑作」と称しているのに対し、リヴァイアサンは「最強の生物」と形容している事も聖書に出てきます。
体は非常に硬い鱗に覆われいかなる武器でもダメージを与える事は出来ないとされていますね。
後年この部分もフィーチャーされて軍艦や作戦名につけられる事となったんだと思います。
一種の願掛けみたいな物でしょうか。
ゴジラの様に口から炎を吐き、鼻からは熱気でしょうか煙が出ているとの記述もあります。
又、巨体故に周囲の海では波が逆巻き、荒れているとも書いてありますね。
神様が作っただけあって人間にはどうしようも出来ない様な怪物なんです。
世界の終末時にはその体は供物として、ベヒーモス、ジズと合わせて食べられてしまうと言い伝えにはあります。
リヴァイアサンは悪魔?
海と繫がりが深いリヴァイアサン、初期はクジラやワニ等のディティールが多く見られた様ですが、後年の版画などに登場する頃には大半が海蛇の姿で描かれています。
もともと人間にとって海洋は謎が多い物。
当時は今よりも海に住む生物自体が崇敬や恐怖の対象だったんでしょう。
先にも述べた口から炎が~とか鼻から煙が~と言うのもクジラの潮吹きから来てる気もします。
しかし、聖書の教えが広まって行くと、海蛇の方がしっくり来るようになったんですね。
硬い鱗等はクジラはありませんから、そうなると必然的に蛇の方が割に合うようになります。
他にも、リヴァイアサンが海蛇となった要因として、他の地域の神話や土着の伝説に影響された背景もありそうです。
元々シュメール・アッカドでは「ティアマト」と言う原初の龍が登場しますが、これと関連付けられたり、ヤムやラハブと言った龍からも影響を受けたんではないかと見られています。
ユダヤ教やキリスト教は一神教ですから、最終的に神様の威光を際立たせるためにリヴァイアサンも悪魔として捉えられるようになって行きます。
後にカトリックの教えで浸透する「七つの大罪」の中では。嫉妬に該当する悪魔として名を連ねますね。
蛇がウネウネととぐろを巻く姿が人間の醜い嫉妬心になぞらえての事です。
いつの間にか神様の最強の傑作はこうして悪魔になってしまうんですね。
大航海時代にはシーサーペントの元祖として登場
こんな感じで広くヨーロッパのキリスト教の中に登場するリヴァイアサンですから、大航海時代の頃には普通に海にいる怪物として考えられるようになります。
海で遭遇すると、船の周りをグルグルと廻り渦を発生させる怪物と言われるようになります。
ここまで来ると未確認生物シーサーペントの様な扱いですね。
広い海にはまだまだ何か潜んで居ると思われ、現代から言うなればUMAシーサーペントの元祖と言えるでしょう。
大海原を航行中に、大きな海蛇に遭遇したら真っ先にリヴァイアサンだと言われたわけです。
もっとも「シーサーペント」と呼ばれる様になるまでそんなに時間は掛からなかったみたいですが、クラーケンや海の司教と等しく海の怪物として身近になってしまいます。
蛇はやっぱり特別な生物か
聖書以外でも蛇と言う生き物は特別な存在感があります。
アダムとイブをそそのかしたのも蛇なら、ドラゴンの原型も同じく蛇です。
この事から、太古より人間は蛇に関して特別な感情を持って居た事が伺えますね。
脱皮する事も生命が循環するかの様な物と捉えられ、ユダヤ教やキリスト教以外でも特別な存在として引き合いに出されます。
ギリシャ神話でもピュートーンやウロボロス、ヒドラ等が登場します。
日本でもヤマタノオロチが有名ですね。
一説にはイブにリンゴを食べる様に促したのは悪魔リヴァイアサンともサタンとも言われるようになります。
悪い物の象徴として登場する事が殆どですが、リヴァイアサンもこうした部分をもれなく持ってると言えるでしょう。
余談ですが、私が小学生の頃にリヴァイアサンと言うタイトルの映画がそこそこ話題になりました。
海洋SFパニックホラーのジャンルでしたが、一言で言うと「エイリアン」を海底を舞台にやりましょうみたいな映画です。
私はそこで初めてリヴァイアサンと言う怪物の名前を知る事になりますが、この映画程よく怖くハラハラし、面白かった印象があります。
まあ、今見たら何てこと無いのかもしれませんが、「海は謎が多いんだなー」と子供心に思いました。
そんな事もあり、未確認生物と少し違いますが、個人的にも思い入れがあるのがリヴァイアサンなんです。