ギリシャ神話に登場する尾を飲みこむ蛇
元々ウロボロスはギリシャに伝わる以前に、古代エジプトで信仰されたメヘンがモチーフになっています。
太陽神ラーを守るためにグルッと自らの体で取り囲んだ蛇がウロボロスの原型になっていますね。
ギリシャに渡ると、それを表す図相が非常に有名になり色々な国、文化の中で神秘的な物を指す象徴となっています。
恐らくここまで無国籍に広まった古代の図相と言うのも珍しいんではないでしょうか。
その姿は自分の尾を咥えた蛇の姿で描かれる事が多いです。
完全なる環になった竜
ウロボロスを説明する事は非常に難解で、異国の文化ならではの意味合いが過分に含まれています。
日本の当時の文化ではあまり重要な意味を見出す事は無いかもしれませんが、他の国々では類似の逸話なども含めて多く目にします。
まず、どこの国でも重要視される生物に蛇がいます。
良くも悪くも高位の存在とされる事が多く、日本でも蛇にまつわる神話は存在しますね。
南米のアステカやマヤ、中国神話、ケルト神話、北欧神話など等トリックスターとして登場する神話は枚挙に暇がありません。
旧約聖書にも登場しますね。
元々蛇と言う生物が注目された理由は、脱皮と言う生態にあります。
当時の人々は、この行為が「生まれ変わり」だと思ったらしいんです。
人間の死生観を大きく覆す生物として注目されたんです。他にも、蛇の場合は割と長期間食事をとらなくても生命を維持できると言う特色があります。
この二点から、神秘的で神聖な生物として敬われてきました。
話はウロボロスに戻しますが、この蛇(もしくは竜)が自分の尾を咥えてグルッと一周している様は「完全なる円」を表しているそうです。
完全と言う概念は全てを内包しつつ、死と再生を表す特別な象徴なんですね。
時期を問わず一見隔離された世界の文明の中に共通の概念が見れるのは何とも不思議な話ですね。
錬金術や世界観にも登場
ウロボロスの図相の中には幾つかバリエーションが存在します。
概ね環を表しているのは変わりませんが、二匹いて繫がっている物や、王冠を被っている物があります。
そのどれもが「完全なる円」を表現していて、思想や宗教に用いられるだけでなく中世では錬金術のモチーフになったり、交易によってヘレニズム文化にも浸透したりします。
個人的に思うのは、二匹のバージョンは「カドゥケウス」と呼ばれる古代エジプトの杖がモチーフになっているんではないかと言う事です。
これは二匹の蛇がらせん状に絡まった物ですが、転じて現在では医療の象徴として見る機会が多いです。
意外にこの二匹の蛇と似ている物は多く、DNA構造を表した物と言う説もありますね。
床屋のグルグル回るオブジェクトも元をただせばこの二匹の絡み合う蛇に行きつくのではないでしょうか。
青と赤は静脈と動脈を表していると言う事ですから、昔は医学の象徴だった物が転じて床屋のトレードマークになっているんだと思います。
インド圏では、世界は大きな亀の背中の上にあり、その上に4頭の象がいて更に中空を大きな蛇がグルッと囲っていると思われていました。
この様に時代を経ても世界各地でその名残と思われる物を散見する事が出来るんです。
今回調べてみましたが、ウロボロス単体の逸話や伝承と言うのはあまり存在しない様ですね。
神話の中等で、退治されたりとか誰かと絡んだと言う話を見つける事が出来ませんでした。
生物や怪物としてよりも、何かの象徴として重要視されたのかもしれないですね。
[当記事の著作権はhttps://chahoo.jp/に帰属します]2016/05/12当記事の無断転載は禁止しています。