ヨーロッパから伝達した首なし騎士の話し
未確認生物とは少し違い、かといって幻想生物とも少し違うオカルトチックな話になります。
今回はデュラハンと言う首の無い騎士の話ですね。
どちらかと言うと幽霊話になるかと思いますが、主にヨーロッパから始まったこの伝承、海を渡ってアメリカでも認知される話になります。
先に書いたブギーマンと同じく、元々ヨーロッパで広まった伝承が開拓時代を経て北米でも知られるようになった物なんです。
「スリーピー・ホロウ」と言うゴシックなニュアンスを持ったホラーおとぎ話とでも言うんでしょうか、そこにも首なし騎士の話が出てきます。
そもそもデュラハンとは何か
まずデュラハンについて書いてみます。
これは、元々アイルランド発祥の不吉な妖精の伝承です。
何故かブリテン島の北部の方は妖精話が盛んで、且つその中には人々に凶兆を教えてくれる存在の話が沢山登場します。
デュラハンと聞くと、ゲームなどの影響で鎧を着つつ自分の切り落とされた首を持った騎士の亡霊と言うイメージがありますが、最初は馬車に乗って現れる妖精の事だったんです。
男性とも女性とも言われていますが、片手に手綱、もう片手に自分の首を携えて夜な夜な家の前に登場します。
登場する場所は無作為と言う事では無く、デュラハンが現れた家からは近々死人が出ると言われています。
その際にうっかり家のドアを空けてしまうとタライいっぱいの血を浴びせられるそうですが、これは自分の姿を見られるのを極端に嫌っているからです。
凶兆を教えに来つつ、姿を見よう者には血を浴びせると言う何とも理不尽な仕打ちが特徴的ですが、仮に目撃してしまうとこれまた携帯している鎌で殺されると言います。
更にそれをかいくぐると、どこまでも追いかけてくると言う事ですからかなりの粘着質と言えるでしょう。
ちなみに馬車を引いている馬の名前はコシュ・バワーと言いますが、水を渡る事は出来ないとされていて、これにより河川や湖を先に渡ると追うのを断念すると言われていますね。
何とも細かい所まで作り込まれているのがアイルランドっぽくて愛着が湧きますが、似たような話は日本の妖怪でもあったような気がしなくも無かったりします。
確か凶兆を届けると言う馬に乗った一つ目の妖怪でニオウさんと言うのが居たような気がするんですが、定かじゃないですね。今度調べておきます。
時代を経ると騎士の側面が強くなっていく
こんな感じで最初は民間に伝わる凶事の妖精と言う側面が強かったデュラハンですが、時代が進むと段々騎士の側面が前面に出てきますね。
性別も男に統一され、乗っているのも馬車では無く一頭の馬になります。
首を持っている所は変わりませんが、この頃になると単純に幽霊とか怪異として民間伝承になっていきます。
恐らく世の中に騎士が登場する時代になり、戦で首を切られて死んだと言う話が後付されたんではないかと思います。
似たような凶兆を告げる妖精でバンシーと言う女性の姿をした者がいますが、これは深夜に叫び声をあげつつ家の前に登場するようです。
もちろんその家からは後日死人が出ると言う事ですが、こちらは女性と言う部分が前面に出ているのに対し、後のデュラハンは男性とまるで対をなすような存在になっていますね。
この頃になると当初のタライで血が~と言った話もナリをひそめ、どちらかと言うと遭遇すると襲ってくる妖怪の様な扱いになります。
都市伝説の走りかもしれませんね、どこか口コミで広まった口裂け女を彷彿とさせます。
アメリカのニューヨークでも語り継がれる
小説家のワシントン・アービングがアイルランド近郊を旅行した際に感銘を受けたのがこの一連のデュラハンの話でした。
アメリカに帰国後、自身の作品「スケッチ・ブック」を発表しますが、その中で初めてスリーピーホロウの物語として世の中に発表します。
これが当時は受けたんでしょう、今のニューヨーク付近を舞台にしたこの物語は人気を博します。
又アービングはデュラハンと言う名称は表立って使わない代わりに、色々な設定を追加します。
まずこの首なし騎士は移民としてアメリカに渡って来たドイツ人騎士と言う事になっています。
元々残虐で傍若無人だったこの騎士は、首を落とされ殺害されてしまいます。
しかし、その後幽霊となって首を抱えながら現れ、近隣の住民を恐怖に突き落とすと言った内容ですね。
この話を元に映画化された作品で有名な物は1999年のティム・バートン監督の作品「スリーピー・ホロウ」ですね。
主演はジョニーデップが演じた、全編ゴシックファンタジーな雰囲気が漂うホラー映画でした。
これまでは日本でもあまり馴染みはなかったスリーピー・ホロウとデュラハンの話ですが、これで一気に認知度は高まったんではないでしょうか。
最近は特にRPGやアクションゲームの中に大体一回はデュラハンが登場します。
単純に自分の首を持っている騎士と言う事でエンターテイメントに登場させるには便利なディティールが多いからかもしれないですね。
余談ですが、最近はアメリカのテレビドラマでもスリーピー・ホロウは放送されていてなかなかの人気を博してるようです。
[当記事の著作権はhttps://chahoo.jp/に帰属します]2016/05/10当記事の無断転載は禁止しています。