世界中に散らばる吸血鬼の伝承

世界各地に存在する吸血鬼

一般的に吸血鬼と言われイメージする物は、そのディティールの殆どは映画からの影響が強いです。
黒いマントを羽織ったオールバックの男性、笑うと口元から牙が見えて処女の首筋に噛みついて血を吸うと言うあたりは特にそうですね。

鏡に映らなかったり、霧や蝙蝠、オオカミに変身して夜に活動すると言うエンターテイメント性あふれる設定も殆どは後世に付けられた物なんですね。
同じく十字架ニンニク、そして日光が弱点と言うのも、前者はキリスト教の普及と共に伝承で語られていたことではありますが、後者は完全に後付けだと言われています。

これらいわゆる「吸血鬼」には元々モデルが存在します。
といっても今では一つの学問の様にもなっていて、端的に○○がモデルです~とは難しくなっているのも現状ですね。

つまり、古代より様々な伝承、逸話が折り重なって現代の吸血鬼像を形作っています。
今回色々書いてみようと思う「吸血鬼」は、そう言った世界中に見る伝承などをメインにしています。

血液にまつわる神秘性

そもそも人の血液を吸って養分とすると言うモチーフは、古来よりどこの地域でも存在してきた物でした。
医学が発達していない時代でも、真っ赤な色をした液体は物珍しく神秘性があったんでしょう。聖書の中にも血にまつわるエピソードは沢山出てきます。

体の中を駆け巡る血液、それが一定量無くなってしまうと死に至ると言う所から、洋の東西を問わず重要な物だとされてきました。
勧善懲悪の概念では、悪とされる物は人の財産など大事な物をかすめ取っていくと言う認識があります。

それ自体イコール悪ですからね。古代ではそれが行きついた先に、「生命に直結する重要な物を奪う」と言う意味で血液を吸うと言うモチーフが成立したんだと思います。
同じ吸血鬼と呼ばれる存在の中でも、血液では無く生体エネルギーを吸い取るとされる物もいます。

血と同じく人を死に至らしめる程重要な物を奪うと言う意味で、同じスタンスと言えるでしょう。

この様に人が生命を維持して活動して行く上で、血は特別な物とされ、同じ様な伝承は各文明ごとで見る事が出来ます。

ブラム・ストーカー以前の吸血鬼

ドラキュラを世の中に広めたイギリスの作家ブラム・ストーカーの本は後世にも様々な影響を与えました。
モデルになったワラキアブラド・ツェペシュが、実際にドラクル=「龍の子供」と呼ばれていた事にも着想を得ています。

ツェペシュ
ヴラド・ツェペシュ
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/

ブラム・ストーカーは、元々ヨーロッパに伝わる吸血鬼伝説に、うまくこの君主を組み合わせる事で一大エンターテイメントを作ったと言えるでしょう。

では、この吸血鬼の伝承はそれ以前はどうだったのかと言うと、基本的に死者が蘇ると言う事象が先にあります。
今と違い完全に当時は土葬でしたから、土の下に埋めた後でもいつか帰ってくるんではないかと言う恐怖があったんです。

実際仮死状態で埋葬されてしまった人と言うのはかなり多かった様で、棺桶の中で息を吹き返し、一心不乱に土を掘って地上に出てくる様は相当怖かったでしょう。
これは昔の日本でも多く確認されている事象の様です。

一説には、死者が蘇り悪さをすると言う伝承はアラビア圏から来たとも言われています。
グールと呼ばれる存在がそれですが、いわゆるゾンビ的な物ですね。このグールの伝承がヨーロッパに入ってくると、その後各地域ごとで呼び名も独自の物が付けられ人々の間に広まっていきます。

バビロニアではアフカル、ギリシャではエンプーサ、ルーマニアのノスフェラトゥ、スラブ圏のクドラク等です。
ちなみに中国ではキョンシーが有名ですね。日本ではヒノエンマがそれに該当するでしょうか。

お札

吸血鬼の退治方法

伝承の数に応じて退治する方法も非常に多くの物が存在します。
十字架に弱く、体に当てると火傷する様なイメージがありますね。見るだけでも怯むと言う姿も良く目にします。

ここに加えて少しコメディ要素が入ってくるとニンニクに弱いと言う物がありますね。
これもニンニクが持つ臭いが弱点に繋がったんだと思います。

他には聖水聖書などキリスト教にまつわる物が多いです。当時ヨーロッパを席巻していたキリスト教にあやかろうと言う物だと思いますが、要は神様の力を借りて退治しようと言う物ですね。

後は月の金属と信じられていたで出来た釘や、もう少し時代を経ると銀の弾丸も弱点となります。
元々銀と言う物質は魔除けなどの意味合いもあり、非常に効果のある退治方法とされていました。

ここで挙げた物は現代まで残っている物でもあり、映画や書籍の中でも頻繁に目にする事が出来ますね。

実際は、ヨーロッパの農村等では不穏な事象が起こると、吸血鬼の仕業として村人が協力し、墓を暴いて対処すると言う事件が多かったんです。
死体の首を切り落としたり、心臓に杭を打ち込んだり、棺桶の中に網を一緒に入れておくなどを手法がとられました。(網は縫い目の数を全部数えないとそこから動けないとされていた)

もちろんこうした行為は死者への冒涜として現代ではお目にかかる事はあまり無いです。

吸血鬼退治の英雄

ヴァンパイア

そんな吸血鬼を退治した英雄の話も幾つか存在します。
主にエンターテイメントから派生した物が多いですが、有名な人だとヴァン・ヘルシングが挙げられると思います。

元々は教授として、その道の専門家と言うイメージが強かったですが、後々屈強なダンディで体中に対吸血鬼用の武器を持った冒険家の様な姿で描かれる様になります。
映画やマンガに良く登場しますね。

スラブ圏の伝承では、特定の人物を指すのとは少し違いますがクルー・スニクと言う英雄譚があります。
これは、生まれた時点で既に吸血鬼退治の宿命を負った戦士とされていて、白い羊膜に覆われて生まれた子は永遠の敵でもあるクドラクと戦いを繰り広げると言われています。

生まれ持っての吸血鬼ハンターと言う事で、戦闘の際には自身も馬や鳥に変身する等ファンタジックな英雄です。
クルー・スニクと言う名前自体も「十字架」と言う意味があるようです。

他にも日本初のゲームの中では「ベルモンド一族」が有名です。
コナミが発売した「悪魔城ドラキュラ」に登場する主人公達は、皆この一族の出身であったり、関わりがあったりします。

このゲーム自体30年近くシリーズ化されているヒット作ですから、年代に応じて非常に沢山の英雄が出てくるのが魅力的ですね。

吸血鬼が人を引き付けるわけ

欧米圏、特にアメリカでは本当に吸血鬼は実在すると思っている人が結構多いと聞きます。
彼らが言うには、一見社交的で日中も行動でき、特定のコミュニティを形成し、不定期に集まっているとの事です。

あくまでこれは噂の域は出ない都市伝説の様な物ですが、紀元前の伝承から生まれたこの怪物が現代でも信じられていると言うのは非常に面白いですね。

吸血鬼の伝承には程よい恐怖と魅力があって、どこか神秘な感じもあります。
死者が蘇って悪さをすると言う部分も、人間の根幹にある「終わり」を否定していて、背徳感の様な物がありますね。

やはりブラム・ストーカーの作り上げた小説の中から誕生し、その後舞台でスマートな男性として演じられる事が多くなった事も関係していると言えます。
そして映画化、これにより時として悲哀を感じさせる恋愛の要素も加わり、一つのジャンルを確したと言えるでしょう。

吸血鬼に関しては非常に多くの情報が存在するの、又機会があれば色々書いてみたいと思います。

[当記事の著作権はhttps://chahoo.jp/に帰属します]2016/06/07
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