AIボットがネットの51%を支配——”死んだインターネット”はもう陰謀論じゃない

最終更新日 6時間 ago by OKAYAMA

あなたがSNSで毎日見ている投稿、「いいね」してくれるフォロワー、リプライをくれるアカウント——その何割が本物の人間だと思いますか?

2025年、OpenAIのCEOサム・アルトマンがXにこう投稿しました。「Dead Internet Theoryをそこまで真剣に考えたことはなかったが、LLMで運用されているTwitterアカウントが本当に多いようだ」。AIを作っている側の人間が、AIに侵食されたインターネットに驚いている——これが2026年の現実です。

Dead Internet Theory(死んだインターネット理論)とは何か

ボットに占拠されたデジタル空間のイメージ
※イメージ画像

「Dead Internet Theory」は、「インターネット上のコンテンツの大部分はすでにボットやAIによって生成されており、人間同士の本物のやり取りはほとんど残っていない」という理論です。

この理論の起源は2019年頃、4chanの/x/(超常現象)板やWizardchanにまで遡ります。そして2021年、「Agora Road’s Macintosh Cafe」というフォーラムで「IlluminatiPirate」というユーザーが投稿した「Dead Internet Theory: Most Of The Internet Is Fake」という記事が広く拡散されました。

当時は「さすがにそれは陰謀論だろう」と笑い飛ばされていました。しかし2024年以降、次々と発表される統計データが、この「陰謀論」が現実になりつつあることを示し始めています。

数字が証明する「死んだインターネット」

ボットが人間を超えた——2024年の転換点

サイバーセキュリティ大手Thales傘下のImpervaが発表した「2025 Bad Bot Report」は、衝撃的な事実を明らかにしました。

2024年、インターネットトラフィック全体の51%がボットによるものとなり、史上初めて自動化されたトラフィックが人間の活動を上回りました。

内訳はこうです。悪意あるボットが全体の37%(前年の32%から急増)、人間のトラフィックは49%。つまり、あなたがWebサイトにアクセスするたびに、その隣には少なくとも同じ数のボットがいるということです。

X(Twitter):最大64%がボットの可能性

AIボットファームのサーバールーム
※イメージ画像

2024年1月、オーストラリアのサイバーセキュリティ企業Internet 2.0が、AIツール「5th Column」を用いてX(旧Twitter)の126.9万アカウントを分析しました。その結果、約64%のアカウントがボットである可能性が高いと判定されました。

この数字は研究者間でも議論がありますが、Yofi.aiの2022年の調査でもXのデイリーアクティブユーザーの24〜37%がボットと推定されており、いずれにしてもXユーザーのかなりの割合が人間ではない可能性を示しています。

イーロン・マスクがTwitterを買収した理由のひとつがボット対策でしたが、皮肉にも買収後の状況はさらに悪化しているように見えます。

Meta:1.4億以上の偽アカウント

Metaの公式レポートによれば、Facebook・Instagramの全ユーザー35.4億人のうち約4%(1.4億以上)が偽アカウントと推定されています。2025年だけでもMetaはスパム対策として1,000万件以上のFacebookプロフィールを削除しました。

さらにMeta自身が、2023年からFacebookとInstagramに28体のAIキャラクターアカウントを運用していたことが発覚し、大炎上しました。

Web全体:新規ページの74.2%にAI生成コンテンツ

SEOツール大手のAhrefsが2025年4月に約100万の新規Webページを分析したところ、74.2%にAI生成コンテンツが検出されました。Europol(欧州刑事警察機構)は、2026年までにオンラインコンテンツの最大90%がAI(合成メディア)によって生成される可能性があると警告しています。

MetaがInstagramに「AIの人間」を住まわせていた

AIが生成した大量のフェイクプロフィール
※イメージ画像

2025年1月、Metaが自社プラットフォームで運用していたAIキャラクターアカウントが大きな問題になりました。

特に話題になったのが「Liv」というキャラクターです。Livのプロフィールには「誇り高き黒人クィアママ。2児の母。真実を語る者」と書かれていました。AI生成の子どもたちがビーチで遊ぶ写真、手作りクッキーの写真——まるで本物の人間のInstagramそのものでした。

しかしワシントン・ポストのコラムニストがLivに「あなたを作ったのは誰?」と質問すると、Livは「10人の白人男性、1人の白人女性、1人のアジア人男性」と回答。黒人クィアママを名乗るAIに、黒人のクリエイターは一人もいなかったのです。

他にも「Carter」(恋愛コーチ)、「Grandpa Brian」(黒人の引退ビジネスマン)など、多様性を演出するためのAIキャラクターが複数存在していました。炎上を受け、Metaはこれらのアカウントを削除しましたが、約1年間、ユーザーは「本物の人間」だと思って交流していた可能性があります。

AIボットファームが選挙を操作している

AIボットの問題が最も深刻なのは、政治的な情報操作の領域です。

ロシアのAIボットファーム(2024年)

2024年7月、アメリカ司法省がロシア政府による大規模なAI情報操作キャンペーンを摘発しました。ロシアはAIを使って1,000以上のアメリカ人のフェイクプロフィールをSNS上に作成し、反ウクライナ・親ロシアのナラティブを拡散していました。これらのボットはXのシステムを騙して「本物の人間」として認識させるコードまで組み込まれていたのです。

686体のAI軍団がアメリカの選挙に介入(2024年)

クレムソン大学の研究チームは、2024年のアメリカ大統領選挙期間中、Xで少なくとも686のAIアカウントが組織的に活動していたことを特定しました。これらのアカウントは13万回以上の投稿を行い、4つの上院選と2つの予備選に介入し、特定の候補を支持するプロパガンダを拡散していました。

使われていたのは、ChatGPTと同じ技術——大規模言語モデル(LLM)です。人間と区別がつかない文章を生成し、他のユーザーに返信し、議論に参加していたのです。

「存在しない人間」が月収100万円を稼ぐ時代

AIがSNSを侵食しているのは、悪意ある目的だけではありません。ビジネスとしてのAIインフルエンサーが急速に成長しています。

スペインのクリエイティブエージェンシーThe Cluelessが2023年に作り出した「Aitana López」は、バルセロナ出身の26歳——という設定のAI生成インフルエンサーです。Instagramのフォロワーは32万人以上、Nikeなどの大手ブランドと契約し、月収は最大1万ユーロ(約170万円)に達します。

さらに有名なのが「Lil Miquela」。2016年にデビューしたこのバーチャルインフルエンサーは、現在年収約200万ドル(約3億円)を稼いでいます。

AIバーチャルインフルエンサー市場は2024年の60.6億ドルから2025年には83億ドルに成長。広告代理店Ogilvyの予測では、2026年までにインフルエンサーマーケティング予算の30%がバーチャルインフルエンサーに充てられるようになるとされています。

あなたのフォロワーは本物か?——見分け方

では、AIアカウントを見破るにはどうすればいいのでしょうか。完璧な方法は存在しませんが、いくつかの手がかりがあります。

プロフィール写真:AI生成の顔写真は、耳の形が左右で違う、背景が不自然にぼやけている、アクセサリーの形状が崩れているなどの特徴があります。

投稿パターン:24時間365日、一定間隔で投稿し続けるアカウントは疑わしいです。人間は寝ますし、気分にムラがあります。

文章の特徴:生成AIの文章は、「〜と言えるでしょう」「〜は興味深いですね」「〜について考えてみましょう」といった定型表現を多用する傾向があります。また、意見を述べているようで実は何も言っていない、当たり障りのない文章が続く場合も要注意です。

エンゲージメントの不自然さ:フォロワーが数万人いるのにリプライがほぼゼロ、あるいは逆にフォロワーが少ないのに特定の投稿だけ異常に拡散されている場合、ボットネットワークが関与している可能性があります。

業界トップが認めた「死んだインターネット」

かつて陰謀論として笑われていたDead Internet Theoryは、2025年になってテック業界のトップたち自身がその現実を認め始めました

2025年9月3日、OpenAIのCEOサム・アルトマンはXにこう投稿しました。

「Dead Internet Theoryをそこまで真剣に考えたことはなかったが、LLMで運用されているTwitterアカウントが本当に多いようだ」

AIを世界に普及させた張本人が、自分の作った技術がインターネットを「殺している」ことに気づいた——この皮肉に、多くのユーザーが反応しました。あるユーザーは、わざとChatGPTのような口調で「この観察は非常に鋭いですね。あなたはより高いレベルで思考しています」と返信し、アルトマンを皮肉りました。

同年10月、Redditの共同創業者アレクシス・オハニアンも「インターネットの多くの部分はすでに死んでいる」と発言。ボットとAI生成のLinkedInスロップ(低品質なAI生成コンテンツ)がインターネットを殺したと述べています。

まとめ——あなたが話しているのは、人間ですか?

もう一度、数字を並べてみましょう。

インターネットトラフィックの51%がボット。Xのアカウントの最大64%がボットの可能性。新規Webページの74.2%にAI生成コンテンツ。Europol予測では2026年にオンラインコンテンツの最大90%がAI生成

ロシアはAIでアメリカ人に成りすまし、AIインフルエンサーは年収3億円を稼ぎ、Metaは自社プラットフォームに架空の黒人ママを住まわせていました。そしてAIを作った側のCEOが「これはヤバいかもしれない」と呟いている。

Dead Internet Theoryは、もはや陰謀論ではありません。統計データが裏付ける、現在進行形の現実です。

この記事を読んだあなたが次にSNSを開いたとき、タイムラインに流れてくる投稿を見て、ふと考えてみてください。

「これを書いたのは、本当に人間だろうか?」

参考文献

関連記事


夜の都市伝説TVでは、世界の謎や都市伝説、陰謀論を独自の視点で深掘りしています。

YouTube: 夜の都市伝説TV
X(Twitter): @yorutoshitv