【闇の薬】なぜ魔女はほうきにまたがった?中世のドラッグ「飛行軟膏」の真実

最終更新日 3か月 ago by OKAYAMA

近年、ここ日本でも社会問題となっている薬物「フェンタニル」。

ごく微量で致死量に達し、しかも“現実感を奪う”ほどの強烈な作用があると報じられています。

現代の闇を象徴するこのドラッグの話題に触れると、ふと思い出すのが──中世ヨーロッパの“魔女伝説”です。

「魔女は軟膏を塗って空を飛んだ」

そんな信じがたい逸話が、古文書や証言として残されています。

実はこの“魔女の軟膏”、幻覚性のある植物から作られた、いわば当時のドラッグのようなものでした。

フェンタニルと同じく、現実を歪め、意識を異界へと導く“夢見薬”だったのです。

覚のレシピ:ベラドンナ、アサ、トリカブト、チョウセンアサガオの危険な魔力

魔女の薬草にも使われたチョウセンアサガオの写真
写真:チョウセンアサガオ(引用元:photoAC)

その軟膏には、ベラドンナ、アサ、トリカブト、チョウセンアサガオといった有毒植物が使用されていました。

皮膚から吸収することで強い幻覚を引き起こし、「夜空を飛ぶ」「悪魔と踊る」などの幻想世界を“体験”させていたといわれます。

実際に空を飛んでいたかは定かでないものの、意識の中で“飛んだ記憶”を鮮明に持っていた魔女もいたとか。

現実と幻の境目が曖昧になるその体験は、現代のドラッグ使用者が語る“トリップ”にもどこか似ています。

魔女がほうきにまたがる理由

魔女が使っていような箒の写真
引用元:photoAC

そもそも魔女といえば“ほうきにまたがって空を飛ぶ”というイメージが定番ですが、実はこの伝説にも「飛行軟膏」が関係していると言われています。

中世の記録によると、魔女たちは“股に軟膏を塗る”ことで幻覚体験を得ていたとされます。この股に塗る道具として、箒(ほうき)の柄を用いたのではないか、という説が存在するのです。

股の粘膜は吸収率が高く、幻覚性の薬を効率よく体内に取り込むには理にかなった方法でした。恍惚状態の中で「空を飛んだ」「悪魔と舞踏した」という“記憶”が残ることで、やがて魔女=ほうきで空を飛ぶという図式が神話化されていったのかもしれません。

幻覚と欲望の歴史──薬物と人間の終わらない関係性

中世ヨーロッパを想起させる風景
引用元:photoAC

ちなみにですが、この「飛行軟膏」の話自体が、実は魔女迫害を正当化するために創られた伝説だったという説もあるんです。たとえば、教会や権力側が“魔女は悪魔と契約して空を飛ぶ”というイメージを広めて、異端狩りの口実にした可能性もあるわけですね。

その背景には、中世から近世にかけての社会混乱、気候変動、宗教改革や男女観などが絡み合い、「異端=魔女」への恐怖が噴出した歴史があります。実際、14~17世紀にかけて欧州で行われた魔女裁判では、10万人以上が告発され、その約半数が処刑されたという衝撃の統計も残っています。

魔女とは結局なんだったのか?

もともと「魔女」という存在は、現代のような“黒い帽子にホウキ”というステレオタイプではなく、村の治療師や助産師、占い師のような民間信仰の担い手だったと考えられています。つまり、地域社会において“ちょっと特別な力を持つ人”というだけで、魔女と呼ばれることもあったのです。

しかし中世のヨーロッパでは、自然災害や疫病、飢饉といった説明のつかない不幸が続き、「誰かが呪いをかけているに違いない」といったスケープゴート思考が広がりました。

加えて、当時のキリスト教会は“悪魔”という概念を利用して異端を弾圧しようとしており、「悪魔と契約した魔女」というイメージを意図的に作り上げていったのです。

“空を飛ぶ魔女”というモチーフは、単なる民間伝承ではなく、恐怖と統制のために拡張された虚構だった可能性もあるわけです。

そう考えると、「飛行軟膏で空を舞う魔女」の物語は、単なるおとぎ話ではなく、抑圧された魂が空を目指した、もう一つの“真実”だったのかもしれませんね。

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