最終更新日 3か月 ago by OKAYAMA
舞台は中東・トルコの東部山岳地帯。灼熱の夏には気温が50度に達し、冬には雪が2メートル積もるような、過酷きわまりない大地。その地下深くで、これまで誰にも知られていなかった哺乳類が静かに、しかし確かに生きていたのです。
2023年に話題になったこのビッグニュースを改めてご紹介いたします。
正体は“極限の地下生物”。2種類のモグラ、新種として認定

※画像はイメージ
発見されたのは、2種類のモグラ。
ひとつはTalpa hakkariensis(タルパ・ハッカリエンシス)。もうひとつはTalpa davidiana tatvanensis(タルパ・ダヴィディアナ・タトヴァネンシス)。名前からしてすでにロマンを感じさせるこの2種は、英・米・トルコの合同研究チームによって、新種・新亜種として正式に認定されました。
モグラの写真はこちらの記事(英語)をご参照ください:
New animal found in Turkey could have been there for 3,000,000 years – Metro
驚くべきはその“潜伏歴”。なんと最大で300万年も前からこの地に存在していた可能性があるのです。そんな気の遠くなるような年月を、人知れず、静かに、ただひたすら生き延びてきた──その事実だけでも、十分に物語になるような話ではないでしょうか。
DNA解析、形態比較、そして最新の科学技術を総動員した精密な調査の結果、これらのモグラは他のどの既知種とも異なる、独立した存在であることが証明されたのです。
モグラの世界に広がる“未知の空白”

たとえば、タルパ・ハッカリエンシスは、他種とは明らかに違うDNA構造と体のつくりを持つ“完全なる新種”。一方のタルパ・ダヴィディアナ・タトヴァネンシスは、1884年に一度だけ記録された古い種・Talpa davidianaの“進化系”とも言える存在で、約140年ぶりの再登場というドラマを背負っています。
今回の調査では、19世紀の博物館に眠っていた標本までもが再検証され、現代のDNA解析や形態比較によって、生きた個体との一致点・相違点が科学的に洗い出されました。いわば“過去と現在のモグラたち”が、時を超えて照らし合わせられたのです。
この発見によって、ユーラシアにおける既知のモグラ種は16から18種へと更新。モグラの世界にも、まだまだ知られざる“空白地帯”が広がっていることを証明する出来事となりました。
なぜ今まで誰も気づかなかったのか?

とはいえ、これだけの長い間見つからなかったというのは、やはり不思議です。なぜ誰も、この存在に気づかなかったのでしょうか?
理由のひとつは、その「極限環境」。
今回モグラたちが発見されたのは、トルコ東部のハッカリ州やビトリス州といった、標高の高い山岳地帯。夏は灼熱の50度、冬は2メートルもの雪が積もる、まさに“生命の限界”のような場所です。
そんな過酷な大地の、さらに地下で暮らす生物を探しに行く──科学者であっても、そう簡単には踏み込めないエリアです。
実際に研究チームも、「この地域のような辺境地帯では、哺乳類でさえ未知のままのものが残っている可能性が高い」と述べています。
人間の目に触れることなく、300万年ものあいだ、土の下で黙々と暮らし続けていた彼ら。
気づかれなかったというより、むしろ「見つかりたくなかった」のかもしれません──まるで、“最後の隠れ里”に生きる忍びのように。
まだまだ未知の世界が眠っている
こんなにも長い間、誰にも気づかれずに地中で生きてきた存在がいたと思うと、なんだかちょっと感動すら覚えます。しかも300万年ですからね。
ピラミッドも弥生時代も織田信長も通り過ぎて、令和の今までずっとスルーされ続けてきたと思うと、もはや“ステルス生物”の称号を贈りたくなります。
この発見は、哺乳類の研究に新たな章を開いたと言えるでしょう。そしてなにより──
「本当にこの地球上に“未知の生き物”なんているの?」
そんな素朴な疑問に対して、「いる」と答えられる、数少ない“確かな証拠”となりました。
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