キャトルミューティレーションとアブダクションの違いとは? FBIも捜査したUFO現象の全貌

最終更新日 23時間 ago by OKAYAMA

「キャトルミューティレーション」と「アブダクション」——どちらもUFOに関連する用語として知られるが、実際にはまったく異なる現象を指している。前者は家畜の異常な損壊、後者は人間の連れ去りだ。

しかし両者はしばしば混同され、同じ場所で同時期に報告されることすらある。FBIが正式な捜査ファイルを開き、ハーバード大学の研究者が論文を書き、21世紀の今も新たな事例が報告され続けるこの2つの現象について、事実関係を整理する。

キャトルミューティレーションとは何か

夜の牧場に降り注ぐ謎の光
キャトルミューティレーションの報告は、しばしばUFO目撃と同時になされる(※イメージ画像)

キャトルミューティレーション(Cattle Mutilation)とは、牛をはじめとする家畜が、通常では説明しがたい状態で死亡・損壊して発見される現象を指す。

典型的な特徴として以下が報告されている。

  • 眼、耳、舌、性器、直腸などの軟部組織が除去されている
  • 切り口が「外科手術的な精密さ」を持つとされる
  • 現場に血痕がほとんど見られない
  • 死体周辺に足跡や車両の痕跡がない

最初に注目を集めた事件——「スニッピー事件」(1967年)

1967年コロラド州アラモサ郡の荒野
事件が起きたコロラド州アラモサ郡周辺の荒涼とした大地(※イメージ画像)

キャトルミューティレーションが初めて世間の注目を集めたのは、1967年のコロラド州アラモサ郡で起きた事件だった。

広く「スニッピー(Snippy)」と呼ばれているが、実際に死亡した馬の名前は「レディ(Lady)」で、スニッピーはその父馬の名前だ。3歳の牝馬だったレディは、頭部と首の肉が完全に除去され、心臓と脳が摘出された状態で発見された。現場には血痕がなく、死体の周囲約30メートル以内に足跡すら残されていなかったと報告されている。

この事件がUFOと結びつけて報道されたことで、「家畜の変死=宇宙人の仕業」という図式が生まれた。

1970年代——アメリカ全土で多発

1973年頃から、アメリカ中西部を中心に家畜の損壊報告が急増した。1970年代末までに21州にわたり、推定10,000頭以上の被害が報告されている。コロラド州では1975年4月〜10月のわずか半年間で約200件が報告された。

農業史の学術誌に掲載された論文(Goleman, 2011)によれば、当時はニクソン政権による牛肉価格凍結や飼料価格の高騰など、牧畜業界に対する政府介入への不満が高まっていた時期であり、こうした社会的背景が現象への関心を増幅させた可能性が指摘されている。

FBIによる公式捜査(1979年)

FBIの捜査資料イメージ
FBIは1979年に正式な捜査「オペレーション・アニマル・ミューティレーション」を開始した(※イメージ画像)

事態を重く見た米国司法省は、FBI元捜査官のケネス・ロメルを調査主任に任命し、「オペレーション・アニマル・ミューティレーション」を開始した。44,170ドルの予算が投じられ、1年間の調査を経て1980年6月に297ページの報告書が公表されている。

報告書の結論は、大多数の事例は自然の捕食活動の結果というものだった。ただし、一部に通常の知見では説明できない異常が含まれることも認めている。この報告書は現在、FBIのFOIA(情報公開法)サイトで全文を閲覧できる。

2019年——オレゴン州で再び

オレゴン州ハーニー郡の牧場
2019年、オレゴン州の広大な牧場で再び異常な事例が報告された(※イメージ画像)

21世紀に入っても報告は途絶えていない。2019年、オレゴン州ハーニー郡のシルビーズ・バレー牧場で、雄牛5頭が約400メートル間隔で相次いで発見された。舌や性器が除去され、血液が抜かれていたと報じられている。

郡保安官事務所と州警察が合同で捜査にあたったが、有力な手がかりは得られなかった。牧場は25,000ドルの懸賞金を提示したが、2026年現在も未解決のままだ(NPR, 2019年10月8日報道)。

アブダクションとは何か

アブダクション(Abduction)とは、人間がUFOや地球外生命体に連れ去られたと報告される現象を指す。体験者の証言には以下のような共通パターンがある。

  • 未確認の飛行物体を目撃した後に意識を失う
  • 船内のような場所で身体検査を受ける
  • 数時間の記憶が欠落する(ミッシングタイム)
  • 催眠療法によって「抑圧された記憶」が浮上する

ヒル夫妻事件(1961年)——アブダクション報告の原点

夜のハイウェイと不思議な光——アブダクション体験のイメージ
ヒル夫妻は夜のハイウェイで異常な光を目撃し、約2時間の記憶を失った(※イメージ画像)

最も有名なアブダクション事例は、1961年9月19日にニューハンプシャー州で起きたベティ&バーニー・ヒル事件だ。

カナダ旅行からの帰路、夫妻は夜空に異常な光を目撃。その後約2時間の記憶が欠落していることに気づいた。帰宅後、車のトランクには原因不明の光沢のある同心円状の跡が残されていた。

ボストンの精神科医ベンジャミン・サイモン博士による退行催眠で、夫妻はそれぞれ「宇宙船内に連行され身体検査を受けた」と類似の体験を語った。ただし、サイモン博士自身はアブダクション体験について、ベティの夢が素材となり夫婦間で共有されたものと結論している。夫妻の誠実さは認めつつも、催眠による回想は「抑圧された記憶の回復」ではなく「夢と暗示の精緻化」だったとの見解を示した。

なお、ベティが催眠下で描いた「星図」は、アマチュア天文家マージョリー・フィッシュによって約39光年先のレティクル座ゼータ星と同定されたが、1990年代のヒッパルコス衛星データで星間距離が修正された後、フィッシュ自身がこの仮説を公式に撤回している。

トラヴィス・ウォルトン事件(1975年)

森林に降り注ぐ謎の光——トラヴィス・ウォルトン事件のイメージ
ウォルトンはアリゾナ州の森林で、発光する物体からの光を浴びたとされる(※イメージ画像)

1975年11月5日、アリゾナ州の森林で伐採作業員のトラヴィス・ウォルトンが、同僚6名の目前で発光する物体に接近し、光を浴びて持ち上げられたとされる事件。ウォルトンは5日間行方不明となった後、ハイウェイの路肩で再発見された。

この事件はしばしば「同僚全員がポリグラフ(嘘発見器)に合格した」と紹介されるが、事実はより複雑だ。同僚5名は合格したものの1名は「判定不能」であり、ウォルトン本人は最初のポリグラフ検査(1975年11月)に不合格だった。この結果は一時秘匿され、翌年に懐疑派の調査者フィリップ・クラスによって暴露されている。2度目の検査では合格とされたが、ウォルトン自身が質問内容を指定しており、検査の妥当性には疑問が残る。

キャトルミューティレーションとアブダクションの違い

項目キャトルミューティレーションアブダクション
対象家畜(主に牛)人間
現象死体の異常な損壊連れ去りと記憶の欠落
物証死体・切り口・現場の痕跡ほぼ証言のみ(催眠療法による回想が多い)
初期の著名事例1967年 コロラド州「スニッピー事件」1961年 ニューハンプシャー州ヒル夫妻事件
公的調査FBI「オペレーション・アニマル・ミューティレーション」(1979年)政府による公式調査なし(民間研究のみ)
報告件数推定10,000頭以上(1970年代のみ)米国だけで数千件の証言

両者が同時に報告されたケース

不気味な牧場——キャトルミューティレーションとUFO目撃が同時報告された場所のイメージ
ユタ州の「スキンウォーカー牧場」のように、両現象が同時に報告される場所がある(※イメージ画像)

興味深いことに、キャトルミューティレーションとUFO・アブダクションの報告が同じ地域で同時期に集中するケースがある。

1975年〜1976年、モンタナ州北中部の5郡では、家畜の損壊事件と並行して127件のUFO目撃が報告された。1週間だけで牛損壊1件、UFO目撃16件、不審なヘリコプター21機の通報があったという。

ユタ州の「スキンウォーカー牧場」では、1994年頃から家畜の損壊、UFO目撃、その他の異常現象が同時に報告された。ラスベガスの不動産業者ロバート・ビゲローが200,000ドルで牧場を購入し、24時間体制の監視を実施したが、物理的な証拠の確認には至っていない。

これらの事例は両現象の関連性を示唆するようにも見えるが、科学的な因果関係は証明されていない。

科学はどう説明しているのか

キャトルミューティレーション——「自然の腐食プロセス」説

カナダ獣医学誌に掲載された査読論文(Wobeser & Runge, 2007)は、腐肉食動物の死後捕食パターンを分析し、クロバエ科の昆虫やコヨーテ、カササギなどが水分含有量の高い軟部組織(目、舌、性器、乳房)を優先的に摂食することを確認した。これはキャトルミューティレーションで報告される特徴と一致している。

また、死後膨張により皮膚に裂傷が生じ、「外科的な切り口」のように見える現象が起きることも実験的に確認されている。

アブダクション——「睡眠麻痺と偽記憶」説

睡眠麻痺のイメージ——科学的な説明
睡眠麻痺の際に見る幻覚が、宇宙人との遭遇として解釈される可能性が指摘されている(※イメージ画像)

ハーバード大学の心理学者マクナリーとクランシー(2005)の研究は、アブダクション体験者10名を評価し、その多くが睡眠麻痺のエピソードと関連していることを示した。覚醒時の入眠幻覚では、全身麻痺、叫べない、光の明滅、電気的感覚といった症状が生じ、これが宇宙人との遭遇として解釈される可能性がある。

2021年のロシアの研究(Raduga et al.)では、明晰夢経験者152名に「夢の中でUFO・宇宙人との遭遇を再現する」よう指示したところ、75%が成功し、61%が宇宙人型の存在に遭遇したと報告。人がREM睡眠中に自発的にアブダクション的体験をし、それを現実と混同する可能性が示唆されている。

まとめ——2つの現象が問いかけるもの

キャトルミューティレーションは「家畜の異常な損壊」、アブダクションは「人間の連れ去り体験」——両者はUFOという共通のキーワードで結ばれながらも、対象・現象・証拠の性質がまったく異なる。

科学的には、前者は自然の腐食プロセス、後者は睡眠麻痺や偽記憶といった説明が有力視されている。しかし、2019年のオレゴン州のように現在も説明のつかない事例は報告され続けており、FBIの報告書でさえ「一部の異常」を認めている。

確実に言えるのは、どちらの現象も単純な「UFOの仕業」で片づけるには証拠が不足しており、同時に「すべてが自然現象」と断言するにも説明しきれない事例が残されているということだ。

参考文献

  • FBI FOIA Vault「Animal Mutilation」(全5パート公開)
  • Goleman, M.J. (2011)「Wave of Mutilation: The Cattle Mutilation Phenomenon of the 1970s」Agricultural History, 85(3)
  • Wobeser, B.K. & Runge, M. (2007)「Maggots, mutilations and myth」Canadian Veterinary Journal
  • McNally, R.J. & Clancy, S.A. (2005)「Sleep Paralysis, Sexual Abuse, and Space Alien Abduction」Transcultural Psychiatry, 42(1)
  • Raduga, M. et al. (2021)「Emulating alien and UFO encounters in REM sleep」International Journal of Dream Research, 14(2)
  • NPR (2019年10月8日)「Not One Drop Of Blood: Cattle Mysteriously Mutilated In Oregon」
  • Fuller, J.G. (1966) The Interrupted Journey