リバプール・ストリート駅から東方向へ徒歩10分の場所にある、パブ「The Ten Bells」。昼夜問わずお酒好きが集まり、昼間からパーティー状態になることもしばしば。
ゴシックさあふれる店の内装も相まってか、面白いようにお酒が進みます。
一方で「出る」と噂があり、お客さんだけでなく従業員も不思議な現象に遭遇しました。ロンドンのパブ「テンベルズ」に出てくる幽霊について、掘り下げてみました。
テンベルズに出る幽霊1:アニー・チャップマン
テンベルズのカウンターには、アンティークな服装が目立つご婦人の姿が目撃されています。もちろん、ご婦人はこの世の者ではございません。
ご夫人が現れる前は決まって、吹くはずのない冷たい風が舞い込むと言います。他にも不自然にガラスが割れたり、物が無くなったりするという不可思議な現象も。
数多くの怪奇現象の犯人であるご婦人の正体は、アニー・チャップマン。かの有名な「切り裂きジャック」事件2人目の犠牲者です。
1888年9月8日未明、アニー・チャップマンは行きつけの店「テンベルズ」で一息ついていました。店を出ると茶色い帽子にオーバーコートを着た男性に声をかけられ、そのまま暗闇の中へ。
アニー・チャップマンは、ハンベリーストリート29番地にて変わり果てた姿となり発見されました。
犯人とされたのは、ロンドンを震撼させた連続殺人犯「切り裂きジャック」。切り裂きジャックは、テンベルズを監視してターゲットを探していたという説もあります。たまたま目をつけられた女性こそが、アニー・チャップマンだったのです。
アニー・チャップマンが、幽霊となり店に訪れる理由は「亡くなった」という自覚が持てていないためと思われます。
アニー・チャップマンが店を出て男に声をかけられた時間は、午前5時頃のこと。遺体発見が1時間後の午前6時と考えると、出会って直ぐに殺害されたのは明らかです。あまりにも突然の出来事だったため、本人も何が起きたのか理解出来ていないのでしょう。
現代を生きる人間から見ると、彼女の幽霊が夜な夜な店に通っているように見えます。でもアニー・チャップマン本人は、日常を過ごしているだけなのです。
店の外観は、切り裂きジャックが暴れていた頃と変わっていないのが、何よりの根拠になります。
番外:切り裂きジャックの幽霊が出る場
テンベルズを語る上で外せない、切り裂きジャック。切り裂きジャック本人の幽霊が出るという話もあるので、ご紹介します。
新年明けて直ぐになると、ウェストミンスター橋東側に切り裂きジャックの幽霊が出るという話が…。
新年になり、ウェストミンスター橋近くにあるビッグベンの鐘が鳴り響く頃、橋の欄干に影が出てくるとのこと。
欄干に出没した影は、橋からテムズ川へ飛び込みます。影が目撃される時間帯こそが、切り裂きジャックが自殺したと思われる時間と同じ。ただの偶然かそれとも…。
テンベルズに出る幽霊2:ジョージ・ロバーツ
1990年代のこと。店で寝泊まりしていたスタッフは、男の幽霊を事あるごとに目撃していました。男の幽霊が出るのは、店の上層階。
誰もいないはずの場所から、足音や笑い声が鳴り響くと言います。幽霊から階段を突き落とされた人や、寝ていたところに男の幽霊が忍び込んでいたという証言も。
男の正体は長年謎のままでしたが、後に元店舗オーナーのジョージ・ロバーツと判明しました。男の正体については、長年不明のままでした。
ところが店の地下室で謎の箱を発見したことにより、事態は急変します。謎の箱を開けてみると、ジョージ・ロバーツ関連の新聞記事が入っていたのです。
ジョージ・ロバーツにとってのテンベルズは、我が家同然の場所。従業員とはいえ大切な場所に赤の他人が踏み入るのは、耐え難いものがあります。「テンベルズは俺の店だ」と主張するために、数々の怪奇現象を起こしていたのでしょう。
テンベルズに出る幽霊3:霊能者が恐れていたモノ
次から次へと出没する幽霊に耐えかねた従業員は、霊能者に頼ることになりました。霊能者は除霊を試みますが、なぜか屋上部屋への立ち入りだけは強く拒みます。
理由は霊能者本人も分かりませんが、恐ろしい「何か」を感じたとのことでした。霊能者の一件があってから数年後、切り裂きジャック研究家がパブを訪れます。
専門家は、霊能者が立ち入りを強く拒んだ屋上部屋へ。部屋で見つかったのは、ナイフで切られたようなあとがあるベビーグッズでした。
屋上部屋では何が起きたのかは、知る術はありません。ズタズタに切り裂かれたベビーグッズから察するに、何者かの手によって命を失われたのは明らかです。
テンベルズの幽霊は今日もお店で
「The Tem Bells」は、現在も絶賛営業中です。おしゃれな内装に美味しいお酒。1杯12ポンド(約2300円)と少々値段は張るものの、独特な雰囲気で飲むお酒は格別なもの。
幽霊と同席する機会があれば、1杯だけでも付き合ってみるのも一興です。